城山三郎さんとの出会い(1)

故・城山三郎さん。経済小説の開拓者として知られ、歴史小説なども多数残しています。

私が最初に勤務したシンクタンクが主催する経営者セミナーを軽井沢で開催したときに、講師としてお招きしました。経営者には城山ファンが多く、私も個人的にその講演を楽しみにしていました。

城山さんには講演前日に奥様同伴で軽井沢に来ていただき、セミナー事務局として開催会場のホテルのレストランで一緒に夕食をとる機会を得ました。約25年前のことですが、大変緊張しながら食事をしたのをよく覚えています。

城山さんとお話ししていたときに、私に年齢をお尋ねになりました。私は「もうすぐ30歳になります」と答えました。すると城山先生は、「人生は短いものだ。好きな人と過ごす時間さえ少ないのに、嫌いな人を好きになる努力をしてまで過ごす時間はないよ」と言うのです。

私は「何てわがままなことを言う人なんだ。この人が本当に一流の作家なのか」と思い、頭がとても混乱してモヤモヤした気分になったこともよく覚えています。

そしてこの言葉がその後のずっと私の心に引っかかることになりました。なぜならそのころまでの私は八方美人で、だれからも好かれたいという思いがあったからです。城山さんの一言は私の心に波紋を投げかけました。

当時、城山さんは60代でした。私は今年、四捨五入すると70代に突入です。最近この年になってようやく、城山さんの言葉の真意を理解できた気がします。

30歳のときにこの言葉を言われた私は、その後その言葉を2~3年心の中で温め続けました。そして「プラス・マイナス・ゼロの人間関係」という考え方に到達しました。(続く)

2025年07月24日