城山三郎さんとの出会い(2)

それまでの私は、どうしても相手に対して「好き、嫌い」という感情を持ってしまっていました。

それは単に話をしただけでそういう感情を持つこともありましたし、仕事上何かの議論によって相手を嫌いになるということもありました。

いったん「嫌い」であるとか「苦手」という意識を持つと、その後どうしてもその人を回避しようという気持ちと行動をとってしまいます。そして疎遠になっていきます。疎遠になれれば良いのですが、職場の上司を嫌いになるケースでは最悪です。毎日顔を合わせなければならないのですから。

私は、たった一度や二度の「嫌な」経験で、そうした相手に対して「曇った眼鏡」を掛け続けていたのです。

そういう上司との関係はビジネス・ライクなものとなり、必要最低限のコミュニケーションしかとりたくないものです。しかし、何かのきっかけで一緒にお酒を飲んだり、電車で移動しているときに個人的な話をしたりしたときに、ふとその上司の違う一面を見ることがありました。

これは何も上司だけに限った話ではありません。同僚や部下、お客様といったさまざまな人間関係において、何かの拍子に本来の相手の姿を知ることがあったのです。

「この人は実はこういう人だったのか。よく話してみたら悪い人ではなかったな」と気が付く瞬間を経験したことはありませんか。さらに言えば、それならもっと早くからいろいろと話をしておけば良かったな。もったいないことをしたと思ったことはありませんか。

私は城山さんの言葉を聞いて以降、この気付きを少しずつ積み重ねることになりました。

そして、ちょっと気が合わないなとか、変な感じの人だなと思ったときに、自分に対して「プラス・マイナス・ゼロ」と言い聞かせました。

嫌な感情や苦手な思いを抱くことで相手を嫌いになって、その人との人間関係を「マイナス」に位置づけるのではなく、「プラス・マイナス・ゼロ」に置いておくように努力しました。

自分の早とちりや先入観、思い込みなどによって相手を正当に評価していないまま嫌いになることを防げると、相手に対する回避行動を取らなくなりますから、相手の良いところを発見できる機会が増えます。

あなたが仕事上あるいは日々の生活において触れ合う人すべてが聖人君子ではありませんから、自分が親切な態度をとっても、相手も同様な振る舞いをしてくれるとは限りません。

もしかしたらそれは、相手の人が、たまたま虫の居所が悪かっただけなのかもしれません。広い心を持って接すれば、嫌いと思う相手は少なくなるのではないでしょうか。

2025年07月25日